コンタクトレンズのお話

Share on Facebook

20数年前私が眼科医になった頃、日本の眼科医は、原則としてハードレンズを薦めてきました。これは、ソフトレンズに比べ、レンズが小さく角膜上で動くことにより、涙液の交換を行うと同時に酸素の供給を行い、角膜表面の細胞層を良好に保つからです。

ソフトレンズは径が大きく、動きも少ないため酸素の供給が角膜の代謝障害が起こりやすいとされています。ただ、ソフトレンズは材質自体が酸素の透過性が良く、さらに最近のレンズの場合薄く、酸素透過ども良好になっており、以前のように角膜の上方に血管が侵入するような例はあまり見なくなりました。

統計的には、ハードレンズが角膜の内側の細胞層に与える障害は少ないようです。また、ハードレンズは、ソフトレンズに比べ、ある程度乱視のある人にも、良好な視力を与えることができます。

にもかかわらず、最近はハードレンズを希望する人がほとんどありません。これは、使い捨てソフトコンタクトレンズの出現と、ソフトレンズの消毒方法も器械を使用する煮沸消毒に加え、薬剤を使ったコールド消毒法が新たに普及し、煩雑であると言われたソフトレンズのケアーが簡単になったためだと考えられます。”装用感が良く”、”はずれにくい”ソフトレンズ。加えて、価格が安くなり、安全性が増せば、視力1.5を望まなければソフトを選ぶことは仕方のないことでしょう。

しかし、いずれのレンズを選ぶにしろ、気をつけていただきたいのは、ケアーと定期検診の重要性です。安全に装用を続けるためには、正しいケアーが必要です。ケアーを怠るとレンズは汚れ、角膜に傷が付き、細菌が感染し繁殖します。悪くすると失明に至ります。またレンズの汚れはアレルギー性結膜炎(右図)を引き起こし、レンズの寿命を短くするばかりでなく、装用感は悪くなり、レンズのずれの原因になります。また、定期検診を怠ると、レンズの汚れ、傷を発見できないばかりでなく、重要な病気の発見が遅れたりします。

最後に、自覚症状も大事です。充血、痛みはもちろん。かすみ、まぶしいなどの症状があればすぐに最寄りの眼科に受診して下さい。角膜に炎症もしくは傷がある場合があります。

 コンタクトレンズは、医療用具です。
            くれぐれも、ご注意を。

Comments are closed.